ア行
併せ馬 [あわせうま] |
調教のとき、2頭以上の馬で並んで走ること。併走させることによって競走馬の闘争本能を引き出し、かき立てる効果があります。ほぼ実力が互角の馬を併走させるのが一般的で、能力上位、又は調子の良い馬が外を回ることが多いです。競り合う為に、1頭で調教するより速いタイムが出やすい傾向にあります。 |
あんちゃん | 騎手免許のない候補生(調教には乗れるがレースには出られない)や、まだ減量の特典のある見習騎手を指す言葉です。また、騎手候補生については、トレーニングセンターでの実習中、ヘルメットに赤い帽子を被せて騎乗することから「赤帽」という呼称もあります。 |
馬なり | レースや調教でムチを使ったり手綱をしごいたりしないで、馬の走る気に任せること。「持ったまま」ともいい、基本的には余力を十分に残している状態を指します。競馬新聞等の調教欄で「馬なり」と書かれているにもかかわらず、速いタイムを記録していれば、その馬の体調がいいと判断できます。 |
ウッドチップ コース |
1〜5cmくらいの大きさに砕いた木片「ウッドチップ」が敷き詰められれた調教用コース。ダートや芝のコースに比べクッションがよく、脚への負担が少ないメリットがあるため現在、美浦/栗東の両トレーニングセンターでは、ウッドチップコースとウッドチップが敷き詰められた坂路コースが追い切りの主流コースとなっています。 |
追い切り | レースに出走する週の強い調教のこと。開催に備えて馬の状態を最高潮に持っていくためレースの行われる週に十分調教で「追い切る」ことからこう呼ばれるようになりました。ちなみに、この時に計時したタイムを「追い切り時計」といい、これが競馬専門紙や新聞に載る調教タイムになります。現在では水曜日に行うのが主流ですが、厩舎によっては木曜日に追い切るなどの例外もあります。 |
お手馬 [おてうま] |
ある騎手が、調教やレースで常に乗り続けている馬を「お手馬」といいます。その馬の性質や癖、能力を熟知していることによるアドバンテージがあります。また「手」という言葉は競馬では「騎手」という意味で使われることも多く、例えば「手替わりする」といえば、別の騎手への乗り替わりを、「手が戻る」といえば以前乗っていた騎手への乗り替わりを意味します。 |
カ行
飼い葉 [かいば] |
競走馬の食料のこと。通常は燕麦を中心に乾草、ワラ、大麦、牧草、青草、とうもろこし、大豆、大豆粕、フスマなどバランスよく配合し与えていますが、厩舎ごと、馬ごとに配合を変え、工夫されています。また、最近では科学的栄養分が加わるようにもなりました。ちなみに、食欲が落ちたときには「飼い(葉)食いが悪い」、「飼い(葉)食いが細い」という表現を使います。草食動物である馬は消火器が草類をよく消化するようにできていて、体の割りに胃が小さく、一度に多量の飼料を与えるのは禁物。そのため飼い葉は一日3〜4回に分けて与えられています。 |
角馬場 [かくばば] |
周囲を柵で囲った一周200〜600mほどの馬場で、主に調教前のウォーミングアップを行う場所。曳き運動、乗り運動によって体を温めた馬が、ここで更に体をほぐしてからそれぞれの調教コースに入るのが一般的です。また、追い切りの翌日やレースを終えたばかりの馬は、オーバーワークを避けるためにコースに出さずに「角馬場」での調整に留めることもあります。トレーニングセンターにはサイズの違う何種類もの角馬場が設置されていて、目的によって使い分けが行われ、初期の調教でコーナーワークを覚えさせたり、馬を落ち着かせるのにも使われます。 |
ガレる | 馬の体重が減り、毛艶がさえず体調が低下している状態のことをいいます。病気や疲労の蓄積によって飼い葉を食べなくなり、体が細く、張りがなくなったときなどに「あの馬は身体がガレているから好走は難しい」と言うように使います。ゆったりしたローテーションや軽めの調教にもかかわらず馬体重が大幅に減っていれば、「ガレている」と判断できます。 |
変わり身 | 休養明けでレースに使われ凡走した馬が、次走で一変して好走した場合、「変わり身があった」といいます。実際、一度実戦を使われたことによってレース勘を取り戻し、それが2戦目で実を結ぶケースは少なくありません。調教内容が大幅に良くなった場合や、前走で太かった馬体が絞れたときに「変わり身」をみせる確率は高まります。 |
急仕上げ | 通常は目標と定めたレースに対し、段階を踏んでコンディションを整えられていきますが、大きなレースの前に一度実戦を使っておきたい場合など、調教の質量ともに不足した状態でレースに出走することがあります。これを「急仕上げ」といいます。この場合、調教タイムや馬体重は通常と大差なくても、レースで息がもたないことも多くなります。 |
サ行
15−15 [じゅうご じゅうご] |
調教で1ハロン(約200m)を平均して15秒程度に軽く流して走ることを意味します。1ハロンを10〜12秒程度で走ることになる実戦からすればかなり遅いですが、調教ではこれが基本的なペースとなります。また、長期休養明けの馬の復調度を測るための目安が、キャンター(ゆっくりした駆け足)で「15−15」を計時できるかどうかともいわれています。 |
攻め馬 [せめうま] |
馬の調教のことで、「責める」が語源。競走馬は「攻め馬」によってコンディションを整え、レースに臨みます。レースの週に行われる実戦を想定した強い「攻め馬」についてはとくに「追い切り」といって区別しています。 |
タ行
待機馬 [たいきば] |
あるレース・シーズンに備えて、レースを使わず休養をとりながら調整されている馬のこと。主に春の疲れを癒すため、夏場のローカル開催を使わずに秋競馬に備える馬をいいます。反対に夏場出走していた馬を「夏季遠征馬」といい、秋競馬のはじめには順調に使われてきた遠征馬と、リフレッシュされた待機馬との対決が焦点のひとつとなります。 |
帯同馬 [たいどうば] |
関東に遠征する関西馬、又は関西に遠征する関東馬に調教パートナーとして帯同する同厩舎の馬のこと。「つけ馬」ともいいます。通常「帯同馬」も遠征先でレースに出走するため、厩舎がどちらの馬で勝負にきているか判断するのが重要になるともいわれています。 |
叩く | ムチで叩くことから転じて、レースに使うことや馬体を仕上げることをいいます。例えば、休養明けでレースに使うとき「休み明けを一度叩く」といった使われ方をします。この場合は仕上がり途上の時に使われることが多いです。また「この馬は叩き良化型だ」といえば、レースに使われながら調子を上げていくタイプの馬で、休み明けは好走しない可能性が高いことを意味します。 |
使い減り [つかいべり] |
連続してレースに出走するごとに成績が下降線をたどる馬を「使い減りするタイプ」といいます。疲労の蓄積や精神的ストレスがその原因だとされています。とくに牝馬にはこの傾向が強くなります。「使い減り」する馬は反対に、休養明けでの好走確率が高いといわれています。 |
テキ | 調教師の事をいいます。戦前は調教師と騎手が兼業だった為、調教師という言葉は使われず、厩務員たちが自厩舎の騎手を逆さ言葉でテキ(手騎)と言っているうちに調教師のことを指すようになったといわれています。 |
鉄砲 [てっぽう] |
長期休養明けでレースを使うこと。「鉄砲をポンと撃つ」から生まれた言葉だとされており、「ポン使い」ともいいます。そして、「鉄砲使い」といえば休養明けでレースに出走させることです。休養明けのレースで好成績 残している馬に対して「鉄砲が利く」あるいは「鉄砲駆けする」といった使い方もします。 |
天狗山 [てんぐやま] |
トレーニングセンターで調教師が調教を監視する場所のこと。ここで調教を見ながら、それぞれの調教師が自分の厩舎の自慢話をすることから「天狗山」の名前がついたといわれています。つまり、「天狗になる」を源とする言葉です。また騎手席は「小天狗」といいます。 |
時計 | 「時計」とは、調教やレースで競走馬が一定の距離を走るのに要したタイムのこと。馬場状態が悪かった為にレースや調教のタイムが通常よりも遅かった場合には「時計がかかる」といいます。また、「時計がない」といえば、ある馬の過去の最高タイムが遅いことを意味します。さらに、「時計ひとつ違う」なら、レースの走破タイムが1秒違う、つまり、それだけ力の差があることを指しています。 |
トラックマン | 美浦・栗東の両トレーニングセンターで取材をしている競馬関係紙の記者のこと。その仕事内容は、スタンドから追い切りを見て調教タイムを計測したり、その内容を伝える「調教班」と、関係者のコメントを取るために厩舎を回り、その週の出走予定馬の調子を取材したりする「想定班」に分けられます。出張が多く早朝勤務、なおかつ土曜・日曜も関係なく、予想のプレッシャーがついて回るなど、過酷な職業です。 |
ハ行
バレット | 競馬開催日に現場で騎手の鞍や帽子の用意、馬具の手入れを行い、騎手がレースに集中できるように補佐する人のことをいいます。欧米では一般的な職業ですが、日本での歴史は浅いです。すべての騎手にバレットがついているわけではありません。必要と思った騎手が個別に契約している場合が多く、何人かで1人のバレットを雇っているケースもあります。 |
坂路コース [はんろこーす] |
傾斜がつけられたコース。1985年に栗東トレーニングセンターに山を切り開いてつくられた「坂路コース」は、関西馬躍進の原動力として脚光を浴びました。さらに1993年には美浦トレーニングセンターにも平らな土地に土を盛ってつくられた坂路が完成し、いまや東西トレーニングセンターのメイン調教トラックとして認知されています。平坦なコースとは違って、スピードが出にくいうえ、馬場材にウッドチップを使用していることで、脚に負担が少ないのが最大のメリット。また、坂を駆け上がることで後肢の鍛錬にもなります。 |
太め | 見た目にも太い仕上がり状態のこと。調教量が足りずに動きが重い場合にも使われ、「太め残り」という言い方もします。単純に馬体重が増えていれば「太め」というものではないですが、理想と思われる体重(過去の連対体重等)より大幅に重い場合が注意が必要です。ただし、成長途上の若馬の休養明けの場合、大幅な体重増でもそれは成長分で、馬体自体は仕上がっている場合も多いです。 |
ボロ | 馬糞(ばふん)のこと。パドックなどで「ボロ」を観察することで、ある程度好不調の判断ができるといわれています。トレーニングセンターでは、集められた「ボロ」は肥料として利用されています。 |
マ行
実が入る | 馬に力がつき、馬体が充実してくること。単に体調が上向いてきたたことを示すだけでなく、馬が成長し、本格化してきたことを表す場合にも使われます。 |
持ち乗り | 競走馬に騎乗して調教をつける調教助手のうち、1〜2頭の担当馬を持ってその馬の調教を行うほか、飼い葉を与えたり、寝ワラを取り替えたりといった日常の世話もする人を「持ち乗り」と呼びます。もともとは関西独自のシステムで、厩舎に所属する調教厩務員(「ラッド」とも呼びます)が馬の状態や調子を把握した上で自分が調教できるというメリットがあります。一方、調教だけを専門に行う調教助手を「攻め專」といいます。 |